2021年5月に、野村総合研究所が2200人を対象に行ったアンケート調査によると、20代男性の52・9%、女性の56・8%が孤独を感じているとの結果が出ました。この割合は、上の世代よりも多いものでした。
2017年に発表された内閣府の『小子化社会対策白書』によると、1990年以降男女ともに未婚率が高くなり、2035年には単身世帯が37.5%に達すると予想されています。つまり、日本人の約4割が独り暮らしということです。
2021年2月、内閣に「孤独・孤立対策担当大臣」が新設されたのも、上記の事態に対処するためでしょう。
否応なしに、多くの日本人にとって「孤独」が他人事ではない時代が訪れようとしています。「孤独」というと「不幸」というイメージがつきまといますが、科学的な視点から見てそのイメージは事実ではないと語るのが、著者で「幸福学」の第一人者である慶応義塾大学大学院の前野隆司教授です。
■「幸せな孤独」を実現している人に共通する3つの考え方
しかし、多くの人は「孤独」は不幸だと感じています。では、同じ孤独でありながら、幸せな人と不幸な人にはどのような違いがあるのでしょうか。そこで前野教授は、孤独でありながら幸せな人に共通する要素を独自に分析。その結果、「幸せな孤独」を実現している人々には、以下の3つの考え方のベクトルが存在していることが判明しました。
①「うけいれる」(自己受容)
②「ほめる」(自尊心)
③「らくになる」(楽観性)
以下、説明します。
①「うけいれる」(自己受容)
孤独に悩んでいる人は、独りぼっちである、友だちがいない、人に声をかけられない、ものごとをネガティブにとらえる、ものごとを理解するのに時間がかかるなど、マイナスだと思っているところばかりに目を向ける傾向があります。
幸せな孤独を手に入れるための最初のステップは、それらをマイナスだと思い込むこと自体が「悪い心のクセ」だと気づき、苦しんできた自分をゆるしてあげることです。
②「ほめる」(自尊心)。
ここでの「ほめる」は自分をほめるということです。
孤独感から抜け出せない人にとっての大きな問題は「自分には魅力がないから孤独なのだ」という誤った思い込み、悪い心のクセでしょう。周囲に人がいる、いないといったことは、必ずしも人間的魅力と正比例するものではありません。対人関係に消極的だから魅力がないということはありません。
③「らくになる」(楽観性)。
ものごとをネガティブにとらえがちな孤独に悩んでいる人にとって、もっともハードルが高い要素かもしれません。しかし、「うけいれる」で自分の良いところも悪いところも認め、「ほめる」で自分の良いところを伸ばす、という段階を踏んでくると、思っているほど高いものではなくなるでしょう。
■3つの考え方にはエビデンスがある
3つの考え方に関する仮説を証明するために、本書の発刊のタイミングで、前野教授は実際にアンケート調査を行いました。実施時期は2021年9月、対象は、20〜79歳までの男女1000名です。結果からいうと、仮説通りに3つの要素は幸せな孤独と正の相関があることが明らかになりました。つまり、孤独であっても自分は幸せだと思う人たちは、3つの要素に関する数値が高まる傾向がみられました(図参照)。
●3度の食事をマインドフルに変える
●1日5分の「自分ほめ」タイムをつくる
●未来年表でわくわくする
●1日を振り返るカレンダー・マーキング法
●90日間自撮りを続ける
……などです。
ほか、全部で24のレッスンが載っています。わずらわしい人間関係から離れ、独りの時間を豊かに、幸せに過ごしたいという方におススメです。