ELCRES HTV150A誘電体フィルムの低損失化は、内部発熱の低減、動作効率の向上、ホットスポット温度の安定化を実現し、より柔軟なコンデンサ設計を可能にする。また、このフィルムの損失低減は、コンデンサにおける損失減少に寄与するものである。
現在、ELCRES HTV150A誘電体フィルムは、アジア太平洋地域の蒸着メーカー、コンデンサメーカーおよびOEMへ供給することが可能であり、アジア地域の企業数社がコンデンサ向けにフィルムを評価している。
SABICで樹脂設計および新規事業部門のシニアマネージャーを務めるEd Kungは、「ELCRES HTV150Aフィルムの開発にあたり、SABICの研究者は熱的および電気的な応力に対するポリマーの挙動に関する知見を活用しました。研究者たちは、対象となる温度範囲と周波数範囲において、低損失の材料組成を選定したことで素晴らしい結果を達成しました。このフィルムは高い動作温度や周波数においても低損失を実現することで、新しいインバータシステムの設計や次世代SiC(炭化ケイ素)パワーモジュールの導入推進に貢献します」と話している。
SABICは8月30日13:20~13:40に出展社フォーラムにおいて、コンデンサフィルム・ソリューションの詳細を紹介する。
◆既存材料と比べて低い内部損失
SABICは、日本のコンサルティング会社であるマシン・テクノロジー株式会社と協力して、電気自動車(EV)パワートレイン・インバータ向けDCリンク用パワーコンデンサで使用されるELCRES HTV150Aフィルムの性能に関する研究、テスト、検証を進めている。この継続的なコラボレーションによって、ハイブリッド車、プラグイン・ハイブリッド車、およびバッテリー電気自動車(xEV)技術を支えるELCRES HTV150Aフィルムの有用性が確認されている。
米マサチューセッツ州ピッツフィールドのSABICポリマー加工開発センターで製膜された単層フィルムの試験では、他の高耐熱材料の挙動とは対照的に、ELCRES HTV150Aフィルムは高周波および高温環境にさらされた際の内部損失が大幅に減少することが示された。これは、最高150度Cの動作温度範囲を有するSABIC誘電体フィルムを用いて製造されたDCリンク用パワーコンデンサは、過酷なホットスポット温度に耐えることができることを示している。PETやPENなどの競合高耐熱フィルムは125度Cを超えると損失が増加するため、これらの動作温度は125度C未満に制限されている。さらに、ELCRES HTV150Aフィルムは、要求される温度範囲および周波数範囲にわたって優れた誘電特性を保持することができる。
マシン・テクノロジー社の代表取締役社長である加瀬部 強 氏は、「SABICとマシン・テクノロジー社は、コンデンサ材料のテストや検証に厳格な手法を用い、共同でお客様をサポートしています。このプロセスを通じて得られたデータによって、他の高耐熱材料と比較したELCRESフィルムの性能について、コンデンサメーカーに情報を提供しています。業界が炭化ケイ素(SiC)やその他の先端技術をベースにしたパワートランジスタにシフトする中、こうしたデータは新しいコンデンサの設計を進める上で指針となるでしょう」と話している。
マシン・テクノロジー社は、コンデンサの開発や製造に長年携わってきた経験豊富なエキスパートで構成されており、研究開発のサポートや技術論文の発表など、積極的に業界の進展に関与している。
◆プロフェッショナル・グレードのパワーコンデンサに対応する高い性能
ELCRES HTV150A誘電体フィルムは、動作温度-40度C~+150度Cおよび最大周波数100kHzの環境で安定した性能を発揮する業界初のコンデンサ用フィルムであり、安定した静電容量、高い絶縁抵抗、優れた誘電性能を提供する。このフィルムは、従来のポリプロピレン(PP)フィルムが105度C以上の環境で直面する大幅な性能低下の課題にも対応することができる。金属蒸着された3umおよび5umのELCRES HTV150Aフィルムを用いて製造されたコンデンサは、低容量変化および安定した絶縁抵抗を示し、150度Cで2,000時間の標準電気および寿命試験をクリアしている。このほかELCRES HTV150Aは、すべての動作温度範囲における高い絶縁破壊強度、良好な自己修復性、アルミニウムや亜鉛に対する優れた付着性を発揮する。
このフィルムは、フィルム – 箔電極およびフィルム – 金属蒸着電極の双方で使用できることが、お客様によって検証されている。SABICのELCRES HTV150Aフィルム製品の主な特長とメリット、代表的な特性、潜在的な用途については、SABICの新しい製品資料(英語)を参照。
https://www.sabic.com/en/products/documents/sabic-elcres-htv150a-film-flyer/en
PCIM Asia 2023は8月29日から31日まで中国・上海で開催される。
SABIC(サウジ基礎産業公社)は、サウジアラビアのリヤドに本社を置く化学製品のグローバルカンパニーである。SABICはアメリカ大陸、ヨーロッパ、中東およびアジア太平洋地区を拠点として、化学品、汎用製品、高機能性プラスチックス、肥料、金属といった製品の世界規模での生産活動を行っている。SABICでは解決すべき課題の特定やソリューションの開発を通して、建設、医療機器、包装、肥料、電気電子、輸送機器、クリーンエネルギーといった主要アプリケーションに携わる顧客をサポートしている。
SABICは世界50か国以上で事業を展開し、3万1,000人を上回る従業員を全世界で雇用している。SABICでは、イノベーションと独創性の育成を促進するため、グローバルで9,948件の特許取得および特許出願を行っているほか、5つの主要地域(アメリカ、ヨーロッパ、中東、東南アジア、北東アジア)においてイノベーションのハブとなる研究開発のリソースを有している。
SHPPジャパン合同会社について
SABICは、2020年4月1日付で日本法人の称号をSABICジャパン合同会社からSHPPジャパン合同会社に変更しました。